牧神の午後の日記

オタク系の話題です

反社会学講座 パオロ・マッツァリーノ

 大爆笑。著者の語り口が巧い。自称怪しいイタリア人ってことで、日本語に慣れていないフリ(あまりこなれていない言葉遣い)をしているのは、単なるポーズ。七五調でもないのに読ませるリズムを心得ていて、内容は皮肉なユーモアたっぷりっということで、面白くならないわけがない。
 まずは題名通りに社会学が如何に信用ならないかを説き、今ではよく知られるようになった少年犯罪の増加・凶暴化という俗説をバッサリ切り捨て、返す刀でパラサイト、フリーター、ニートを歴史的観点からも再評価と論題は縦横無尽に駆け巡り、最後は年金問題への提言まで辿り着きます。ともかく統計のマジックを見抜く、疑いを持つこと、自分で検証することの大切さを繰り返し著者は訴えています。大多数は常識への反証も誰かが言ったことを鵜呑みにしているだけ、と手厳しい。
 また、人間いい加減史観と自称する、人間観・歴史観もユニークながら納得するところ多々です。だからといって、それに安住するのではなく、いい加減ナノを前提に社会を少しでもよくするには、ということを考え、提言している内容は在る意味とっぴなものもありますが、データを見て真剣に考えられたもので、なかなか鋭いところをつくなぁ、と感心しきり。最後の年金問題似ついても、実現は難しいように思いますし、副作用もあるように思いますが、一考の価値はあると思いました。 

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