牧神の午後の日記

オタク系の話題です

サクラダリセット 河野裕

 サクラ・ダ・ってくらいだから聖的な意味を込めているのかと思っていました。舞台が架空の町、桜田市なんですね。勿論狙ってのネーミングではあると思いますが。その桜田市には超常現象をおこす人たちが集まる町。判りやすくと言うと学園都市ですか?(違)。ヒロインはリセット能力を持っている少女。つまり若干の制限付きながらセーブした時間に世界を戻す力。主人公はその世界改変の影響を受けずに記憶を保ち続けることのできる能力を持つ少年。
 死ぬはずだった猫を助けたいという依頼から世界をリセットし、もう一度やり直す。でもなにかやり直した世界では少し筋道が違ってきている。どこで違ってしまったのか?何故違ったのか?タイムループに謎解きの要素を加えているのは古典的ながら語り口が巧くて引き込まれます。そして、主人公のトラウマとなっている2年前の事件と、今回の事件を引き起こした少女の同質性。悪い人はいない、という優しい世界観も好みですし、単なる端役と思っていた登場人物が最後のギミックになった、まるでパズルのピースがうまく嵌まったような細工も見事。
 ただ、主人公曰くの「ひどいこと」での最後の解決が、それしかなかったとはいえ、自分(読者)の感情を簡単に作者の手のひらの上で玩ばれているようでイヤな感じだったのが残念。まぁ、To Heartのマルチシナリオのラストを見ている気分と言えば良いのでしょうか。結局はハッピーエンドで嬉しいのですが、それすらも予定調和な舞台設定というか。
 とはいえ、シリーズとして次作も素直に読みたくなる出来栄え。

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