牧神の午後の日記

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終わらぬ「民族浄化」セルビア・モンテネグロ 木村元彦

 フリージャーナリストによるコソボ空爆後のコソボ地域のルポルタージュ。以前読んだ多谷千香子さんの「「民族浄化」を裁く」の後の世界、しかも視点はセルビア人からという非常に対照的な本。しかしそこにあるのは絶望としか言うほか無い状況な事は共通している。
 正義の反対は悪ではなく別の正義、とはよく言われるけど、一連のユーゴスラビアでの紛争で犠牲になったのも加害者になったのも、昨日までは隣近所で共存していた一般民衆達、としか言い様がないのが何とも言えず哀しい。著者も自分の無力を嘆きつつ、打ちひしがれながらも、ある種の使命感でこうした事実を伝えてくれている。果たしてそれを受け止める器量がヒトにあるのか?答えは昏いと言わざるを得ない。

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