牧神の午後の日記

オタク系の話題です

うらめしや

 最も好きな小説の一つ「ゼウスガーデン衰亡史」の作者、小林恭二さんの「新釈四谷怪談」読了。残念ながら小説ではなく、集英社新書に書かれたタイトル通り、四谷怪談の解説本です。新釈と銘打っているとおり、基本はお岩さん貞女説に立ちながら、その貞女を日本演劇・文学史上最大の祟り女に変質させた作者鶴屋南北の問題意識、さらには近代的自我が確立しつつあった当時の時代背景を絡めながら、アウトラインを追いつつの概説です。
 原作の概略しか知らず、四谷怪談が忠臣蔵とネガポジの関係にある、ということすら知らなかった私のようなぼんくらでも最後まで飽きずによめました。これは筆者の筆力に負うところが大きいでしょうね。

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