牧神の午後の日記

オタク系の話題です

被害者帝国主義

 中嶋聡さんの『「心の傷」は言ったもん勝ち』読了。昨年話題になった横綱朝青龍心身症の問題を枕に、まさに題名通「自分はこんなに被害を受けたのです」と主張する自称被害者が増えているのではないか?この自称被害者の問題は、私がそう感じた(被害を受けた)ということだけで、真実と見なされてしまう、裁判では被害がなかったことの証明は不可能で、せいぜい自分が犯人ではないことを証明することしかできない、そこには被疑者の推定無罪も働かない、ことへの危機感を表明した本です。
 本書でも言及されていますが映画「それでも僕はやってない」等の痴漢冤罪ではそれが特に顕著に現れているのは事実です。このような事象について「被害者帝国主義」と著者はレッテルをつけて、その原因について過度な弱者の保護(そのような言葉を使っていませんが)や、その保護のための裁量範囲の縮小にあると考えているようです。多分それはそのとおりだと思います。ただ、それに対して、だからそんな細かいこと気にしないで、といっても痴漢/セクハラされる女性にとっては何の解決にもならない訳で、私個人としては一種の振り子が触れた状態であって、(冤罪を受けた人には気の毒ですが)多分、ある程度時期を持って振り子が戻ってくるのを待つしかないのかなぁ、と思っています。それに対して裁量権の復活とかいっても、「自称」被害者の方々はますます態度を硬化させるだけではないか?とちょっと悲観しています。居酒屋トークには良い素材と思うのですけどね。

amazon: 「心の傷」は言ったもん勝ち (新潮新書 270)