牧神の午後の日記

オタク系の話題です

ふたつのスピカ 第15巻 柳沼行

 3年間に及ぶ東京宇宙学校での苦しい、でも楽しかった3年間も大詰め。ついに宇宙飛行士候補の選抜の日がやってきました。勿論、結果は言うまでもないことなのですが、それを発表する鬼教官の心中が、なんというか個人的には一番込み上げるものがありました。皆頑張ったのは判っていても用意された椅子は一つだけ。途中道半ばにしてあきらめた人間もいれば、その直前まで手が届きながらも逝ってしまった人間もいる。そうした辛さも乗り越えて過ごしてきたのに一人しか選べない過酷な現実。選ばれなかった生徒達になんと声をかければ良いのか、それだけでドラマになりそうな、でもそこをあえて事務的に進行したのは、そうしないと彼自身も込み上げる涙を耐えられなかったからだと信じています。そして卒業式後で初めて吐露される彼の心情、ケイへの感謝の言葉にはただ窒息しそうなまでに滂沱あるのみ。
 さらに何よりも素晴らしいのは、今回選ばれなかったキャラクター達も、選ばれた生徒を心から祝福し、自分たちの夢をあきらめなかったこと。選ばれた人間よりも遠回りになるかもしれないけれど、別のルートで自分達の夢をかなえようとするところ。フィクションのキレイ事っちゃぁ身もふたもないですが、夢はあきらめない限り夢であり続け、人を力づけてくれるという作者の強いメッセージを感じました。
 次巻がいよいよ最終巻。10月23日の発売日を首を長くして待ちたいと思います。

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amazon: ふたつのスピカ DVD-BOX  え?TVドラマ?アスミの性格があまりに変わりすぎていて、開始3分で見るのをやめた口です(笑)。思えばやじあきさんの演技は素晴らしく嵌まってましたねえ。