牧神の午後の日記

オタク系の話題です

椅子とパソコンをなくせば会社は伸びる! 酒巻久

 ITProにも「本当に「いす」がなかった,キヤノン電子のオフィス」として採上げられた、その話題の本。といっても単行本発行からそれなりに経っているので、読んだのは平成十九年発行の文庫本。前書きによると「データ類の最低限の修正以外はほとんど手直しは必要な」かったとのこと。
 内容は、羊頭狗肉というと言い過ぎですが、ちょっと大袈裟に過ぎるように思います。まぁ社長・経営層には、あえて大袈裟に言うことで現場の危機感を高めるという人種も居るのでそれも無理はないかも、と思うのですが。思いきり一般化するとホワイトカラーの生産性向上がテーマで、その手段として椅子を無くすということ、パソコン利用のルールを定めるというのが書名に関する内容。それ以外にもキヤノン用語ですかね?無駄を無くす=「会社の垢すり」の方法や、社員の自主性を引き出す方法、リーダの育て方なと幅広く採上げていますが、やはり椅子とパソコンがメインテーマと考えてよいと思います(それ以外の記述はあまり印象に残らなかった)。
 で、やり方、考え方は至極全うなんですが、なんというか姑息というか、イヤラシイと感じる部分が大きかったです。たとえば、椅子を無くすとき、社長の指示では現場にはやらされ感が漂うので、経った方がアイデアが創出できると言うアメリカン研究結果のレポートを社員の目に付くところに置いて、社員が気付くのを待った、とか、社員から言わせるだけ言わせておいて、「労働組合との問題はないか?」とわざとらしく確認するところ(「わざとらしく」とは直接には書いていないですが)。パソコンの利用ログ(メールも含めて)を取って業務外利用が多いので、業務以外の利用を一切認めないとマクレガーでいうところのX理論で社員を「管理」しようとするところ。で「社員の自主性」を重んじるというのに違和感を感じるのは私が自由と自主を履き違えているからなんでしょうかね?
 アプローチとして全うで参考になる部分も多いです。データ・事実関係を抑えることは当然として、青色LED訴訟について、評価すべきは特許技術ではなくアイデアだと看破し、日本はアイデアを評価する風土がないといい切るのは流石、と感服しました。

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